天然の代謝物である4-クレゾールがグルコース恒常性を改善しβ細胞機能を促すことを示唆する研究結果が、Cell Reportsで報告されました。

研究チームは心筋梗塞などを発症したレバノン人の137例を糖尿病患者とそれ以外に分け、血液に含まれる代謝物を網羅的に解析した結果、クレゾールの血中濃度が低いことを明らかにしました。次に、マウスを対照食および高脂肪食を与えた群にわけて微量のクレゾールを継続的に皮下投与しました。

高脂肪飼料を与えたマウスは、対照飼料を与えられたマウスよりも急速に体重が増え、空腹時高血糖と著しい耐糖能異常を発症しました。グルコース負荷後の血糖、腹腔内ブドウ糖投与負荷試験(IPGTT)中の累積血糖は、対照群よりも高脂肪飼料を与えたマウスで有意に上昇しました。高脂肪飼料を与えたマウスにおけるクレゾールの効果として、体重減少、血糖コントロールの改善、およびグルコースに反応したインスリンおよびCペプチドの分泌促進が有意に認められました。

フランス、レバノンなどの研究チームに加えて、京都大学の松田文彦教授と島津製作所による共同研究であり、社会課題である糖尿病治療における新候補物質の発見ということで注目を浴びることが予想されます。また、ヒトにおいてクレゾールは体内で直接作ることができないということもあり、今後はサプリメントなどによって血糖値を抑えられる可能性があることが述べられています。

Cell Rep. 2020 Feb 18;30(7):2306-2320.e5. doi: 10.1016/j.celrep.2020.01.066.