糖尿病の管理において、生活習慣を是正する中心とされる食事療法について、新たな概念が糖尿病診療ガイドラインに盛り込まれました。本レポートで食事療法に関するエビデンスについて取り上げていますので、ガイドライン変更に伴って今後の治療戦略にどのような影響があるのか、エビデンスを活用しながらディスカッションを行う際に是非ご活用ください。

BMI減少およびグルコース代謝に対する断食の有効性 (10月9日)

成人において断続的な断食(IFD)はBMIの減少に伴い、アディポカイン濃度、インスリン抵抗性、血糖コントロールの改善により代謝に有意な効果があることを示唆するメタ解析・システマティックレビューがJournal of Clinical Medicineで報告された。 Cochrane、PubMed、およびEmbaseデータベースを検索し、2814件の研究から、最終的に12件(545例)が選択され、標準的な食事にIFDを実施した群と継続的にカロリー制限を行った群を比較した。対照群と比較してIFDでは、BMIは-0.75、空腹時血糖は-4.16mg/dL、HOMA-IRは-0.54の有意な変化があった。

糖尿病診療ガイドライン2019が公開 (9月30日)

日本糖尿病学会は、糖尿病診療ガイドライン2019を発行し、同学会のウェブサイトで公開した。本改訂において「J-DOIT1〜3」「JDCP study」など次々と報告されつつある研究結果や、新規作用機序の治療薬、CGMやSAPのような新しく開発された機器における知見が反映された。さらにより個々の症例に対応可能である点が重視され、従来の標準体重の代わりに目標体重という概念が食事療法に取り入れられた。

食事療法による糖尿病CVDリスク低下に新たなエビデンス (9月19日)

米カリフォルニア大学の研究グループは、地中海食や米国糖尿病学会(ADA)が推奨する食事療法が、閉経後2型糖尿病女性のCVDのリスクを有意に低下させるという研究結果を発表し、記事が「Journal of the American Heart Association」に掲載された。 本研究は、Women’s Health Initiativeのデータを用いて、CVDの既往がない2型糖尿病の女性患者5809人を解析し、被験者から得た食事に関する詳細な質問票に基づき、4種類の食事評価スコアを用いて食生活の質を評価した。食事の種類は、地中海食、高血圧予防のためのDASH食、ADAが推奨する食事療法、旧石器時代食であり、解析の結果、平均12.4年間の追跡期間中に、10.9%が冠動脈性心疾患、6.4%が脳卒中を発症した。4種類の食事評価スコアのそれぞれを5群に分け、スコアが最小の群と最高の群でCVDリスクを比較すると、スコアが高い群ではDASH食で31%、ADA推奨食で29%、地中海食で23%、有意なリスク低下が認められた。旧石器時代食のみ有意差が見られなかった。