今回は新薬の発売や製造販売承認取得のお知らせに加えて、第55回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会が開催されたことにより、DPP4阻害剤・GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害剤を始めとする糖尿病治療薬の新たな知見が多く発表されているため、現場で話題となり得るトピックを取り上げています。既に学会参加によりご存知の先生にはご意見をお伺い頂き、まだご存知でない先生には御社規定の範囲内で情報提供としてお使いください。

メトホルミンとビルダグリプチンの早期併用療法における長期的な有効性 (10月1日)

ノバルティスは2型糖尿病を対象とした5年間のVERIFY試験で、エクア錠とメトホルミンの早期併用療法における長期的な有効性を証明したこと、およびその結果がLancetに掲載されたことを発表した。

VERIFY試験はビルダグリプチンとメトホルミンの早期併用療法の血糖コントロール維持効果を評価するためにデザインされた試験であり、2型糖尿病と診断後早期かつ治療歴がない患者2001名を対象に、34ヵ国254施設で実施された第IV相ランダム化二重盲検試験である。

ビルダグリプチン(50mg、1日2回)とメトホルミン(患者毎に1日用量1000~2000mg)の早期併用療法が、メトホルミン単剤療法と比較して、初回治療からの脱落までの期間(ランダム化の13週後から2回連続してHbA1c≧7.0%となるまでの期間)の相対リスクを統計的有意に49%低下させ、主要評価項目を達成したとしている。

オゼンピックによるビクトーザおよびカナグリフロジンと比較したHbA1cおよび体重減少効果 (9月27日)

ノボノルディスクは週一回皮下投与セマグルチドの試験であるSUSTAIN8およびSUSTAIN10から得られた結果を発表した。発表によると、メトホルミンによる治療で良好な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者において、オゼンピックはカナグリフロジン(300mg)に対してHbA1cおよび体重減少効果で優位性を示した。また2型糖尿病患者におけるHbA1cおよび体重減少について、オゼンピックはピクトーザ(1.2mg)に対して優越性を示したとしている。

ゾルトファイ配合注フレックスタッチが新発売 (9月26日)

ノボノルディスクファーマはインスリン療法が適応とする2型糖尿病を効能・効果とする、持続型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合注射液であるゾルトファイ配合注 フレックスタッチを発売したことを発表した。

ゾルトファイ配合注はトレシーバとビクトーザを固定比率で配合した新医療用配合剤で、国内初にして唯一の基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射液である。また1日1回投与で低血糖の発現頻度を高めることなく、食事のタイミングに関わらず投与することが可能であるとされている。

2型糖尿病患者の主要有害心血管イベントに対するリナグリプチンとグリメピリドの効果(CAROLINA試験) (9月24日)

比較的早期の2型糖尿病で心血管リスクが高い成人において、グリメピリドと比較したリナグリプチンの複合心血管アウトカムは非劣性であったことが示されたCAROLINA試験の結果がJAMAで報告された。

本試験では、比較的早期の2型糖尿病患者で、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク因子を持つ患者および確立された患者において、通常のケアに加えた1日1回5mgのリナグリプチン投与群(3,023例)または1日1回1〜4 mgのグリメピリド群(3,010例)が無作為化され、中央値6.3年にわたって複合心血管アウトカムを評価した。リナグリプチン群では11.8%、グリメピリド群で12.0%の複合心血管アウトカムが確認され、非劣性基準を満たしているが、優位性は満たさなかった。

フィアスプ注の国内での製造販売承認取得 (9月20日)

ノボノルディスクファーマは新規の超速効型インスリンアナログ製剤である「フィアスプ注 フレックスタッチ」「フィアスプ注 ペンフィル」「フィアスプ注 100単位/mL」について「インスリン適応となる糖尿病」を効能・効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。

フィアスプ注はインスリン アスパルトを有効成分とした新しい製剤で、皮下投与後初期のインスリン アスパルトの血中への吸収速度を速め、かつ血糖降下作用が速く発現するよう、ノボラピッド注の処方を変更した製剤であるとされている。

腎機能低下糖尿病患者に対するSU剤と比較したメトホルミンのMACEリスク減少効果 (9月19日)

腎機能が低下した2型糖尿病患者の薬物療法において、メトホルミンはSU剤に比べて主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが低いことを示唆する研究報告がJAMAで発表された。

本研究は米国退役軍人に対する後ろ向きコホート研究であり、67,749例のメトホルミンおよび28,976例のSU剤で、持続的に単独療法治療を行われている2型糖尿病患者を対象に急性心筋梗塞・脳卒中・TIA・心血管死を含むMACEの発症を検証した。その結果、メトホルミン群では 1,000人年あたり23.0、SU剤群では1,000人年あたり29.2の発症リスクを示した。

EF低下心不全患者に対するダパグリフロジン投与による心不全増悪と心血管死リスクの減少効果 (9月19日)

糖尿病の有無にかかわらず心不全で駆出率(EF)が低下した患者では、ダパグリフロジンの投与はプラセボと比較し、心不全の増悪および心血管死のリスクを有意に低下することを示した研究報告がNEJMで発表された。

NYHA心機能分類II~IVでEFが40%以下の心不全患者4,744例を対象とした第III相プラセボ対照無作為化試験であり、プライマリーアウトカムは心不全の増悪(入院または心不全の静脈内治療を伴う緊急来院)または心血管死の複合とされた。中央値18.2カ月にわたって、ダパグリフロジン群では16.3%(386/2373例)、プラセボ群では21.2%(502/2371例)の発生が認められた。