2019年8月31日(土)~2019年9月4日(水)にフランスのパリで開かれた欧州心臓病学会(ESC)において、ESCと欧州糖尿病学会(EASD)が共同で作成した糖尿病と心血管疾患に関するガイドライン(GL)2019年版が発表されました。また、第55回欧州糖尿病学会(EASD)年次集会総会が2019年9月16日(月)~2019年9月20日(金)にスペインのバルセロナで開催されたことで、新たな研究報告が続いています。是非、興味のあるトピックをお伺いするドアオープナー等にご活用ください。

糖尿病による医療費の比較 (9月18日)

2型糖尿病患者の医療費は糖尿病でない人の2倍以上で、1型糖尿病では5倍以上に上昇する事を発表し、欧州糖尿病学会(EASD)の年次集会総会で発表された。

英国の医療情報を収集したデータベースを用いて、2017年から2018年における2型糖尿病と1型糖尿患者の5800万人の入院、緊急入院、外来受診、事故・救急等に関するデータの解析を行った。試験の結果、平均年間費用は糖尿病のない人と比較して、2型糖尿病患者の2倍以上であり、救急医療の平均費用は3倍高かった。同様に1型糖尿病患者の平均費用は、5倍高く、救急治療では8倍高い事が確認された。

著者は「糖尿病患者は特に緊急事態として入院する頻度が高く、入院患者として平均して長く滞在する。開業医と糖尿病専門医チームによる糖尿病の管理の改善は、糖尿病患者の健康を改善し、病院の医療コストを大幅に削減することができる」と述べている。

肥満が2型糖尿病の発症リスクを6倍に増加 (9月16日)

肥満は2型糖尿病の発症リスクを6倍に増加させることが、9,500人以上を対象としたデンマークの大規模研究で明らかになった。

研究チームは、デンマークにおいて男女9,556人(女性49.6%、男性50.4%、平均年齢56.1歳)を対象に統計モデリング調査を行った。参加者の49.5%が平均14.7年間の追跡調査中に2型糖尿病を発症した。健康的な生活スタイルとして、禁煙、中程度のアルコールの消費、定期的な運動、健康的な食事という条件を設定し、3つ以上を実行している人を健康的と定義し、0または1つか実行していない人を不健康、残りを中間的と定義した。遺伝的リスクについては、2型糖尿病と強く関連していることが知られる193の遺伝的変異体を含む遺伝的リスクスコア(GRS)によって評価した。

その結果、不健康な生活スタイルと肥満の両方をもっていると、遺伝的リスクに関係なく2型糖尿病を発症するリスクが上昇することが確認された。肥満の人では、標準体重の人に比べ、2型糖尿病の発症リスクが5.8倍になる事も確認された。また不健康な生活スタイルは健康的な生活スタイルに対して2型糖尿病の発症リスクが20%増加する事も明らかとなった。遺伝的な原因や不健康な生活スタイルも糖尿病の発症リスクを増加させるが、肥満の方がはるかに高い事が示された。


糖尿病と心血管疾患に関するガイドライン(GL)2019年版が発表
(8月31日)

8月31日~9月4日にフランスのパリで開かれた欧州心臓病学会(ESC)において、ESCと欧州糖尿病学会(EASD)が共同で作成した糖尿病と心血管疾患に関するガイドライン(GL)2019年版が発表された。

新ガイドラインでは、「糖尿病および心血管合併症予防の中心となるのは生活習慣の改善である」と強調し、具体的に、禁煙、カロリー摂取量の低減による過体重の改善、心血管リスク低下のために、オリーブ油やナッツを加えた地中海食を採用、禁酒、運動が禁忌(重度の併発疾患を有する患者や余命が短い患者など)でない限り、糖尿病の予防・管理のために中強度~高強度の運動(有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせ)を週に150分以上行うことを推奨した。飲酒に関しては、近年のエビデンスにより、「中等度のアルコール摂取を心血管疾患の予防策として推奨すべきでない」と変更された。治療薬に関する項目では、「心血管疾患を合併するか心血管リスクが高い2型糖尿病患者に対しては、GLP-1受容体作動薬およびSGLT2阻害薬を第一選択薬とすべきである」と推奨された。