糖尿病患者さんの治療に新しい知見がLANCETやJAMAといったインパクトファクターの高い雑誌に掲載されています。また食事療法に関わる食事摂取基準が厚生労働省から発表になり、糖尿病に関連する項目を記載しています。是非内容をご確認頂き、先生方の治療方針にどのように影響するのかヒアリング等にご活用ください。

糖尿病性腎症の悪化・非悪化を予測するモデルの構築 (9月13日)

藤田医科大学と第一生命および日本IBMが共同研究した糖尿病性腎症の悪化予測モデル構築に係る成果についての論文が、Scientific Reportsに掲載されたことが発表された。

13万人以上の各種検査値や診療記録・栄養指導記録、継続通院患者の情報から把握できる時系列データ等についてAI技術を活用して解析され、第1期の軽度な糖尿病性腎症患者について、180日後の病状進行(ステージ変化)を高い性能で予測するモデルが構築できたと述べられている。さらに180日後の腎症悪化が、長期的に重篤な合併症の発生率と関連するかどうかについて検討した結果、180日後の腎症の悪化が将来の透析導入や心血管合併症の発症に関連することを見いだしたと発表されている。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定ポイントの公開 (9月8日)

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の策定案を公開した。パブリックコメントの募集を終了し、9月下旬頃に告示を予定している。糖尿病に関わる改定案として、次のような案が掲載されている。

(1)高齢者では、フレイル予防及び生活習慣病の発症予防の両方に配慮する必要があることを踏まえ、当面目標とするBMIの範囲を21.5~24.9とした。

(2)糖類の摂取量基準について糖類の摂取量の把握がいまだに困難であることから、基準の設定は見送られた。

(3)サプリメントを摂取してセレン摂取量を意図的に高めることは、糖尿病の発症リスクを高めるため控えることを推奨。

(4)一般的にはカリウムが豊富な食事が望ましいが、特に高齢者では、腎機能障害や糖尿病に伴う高カリウム血症に注意が必要。

2型糖尿病の肥満患者における代謝改善手術と心血管イベントの関係 (9月2日)

2型糖尿病の肥満患者に体重減少および代謝改善を目的にした手術を行うことで、主要な心血管イベント(MACE)を4割程度減少させた研究結果が、JAMAで報告された。

背景因子(BMIなど)をマッチさせた11,435人を比較対照群として、1998~2017年に代謝改善手術を受けたBMI30以上の肥満2型糖尿病患者2,287人を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した。一次エンドポイントは全死亡、冠動脈イベント、脳血管イベント、心不全、腎障害、心房細動の初回発生とし、手術によるリスク低下を確認した。

安定した冠動脈疾患を有する糖尿病患者におけるチカグレロール・アスピリン併用効果 (9月1日)

心筋梗塞または脳卒中の病歴のない安定した冠動脈疾患をもつ糖尿病の患者において、チカグレロールとアスピリン投与により虚血性心血管イベントの発生率を抑えることを示したTHEMIS-PCI試験の研究結果がLANCETに掲載された。

本研究では50歳以上で安定した冠動脈疾患を有する2型糖尿病の患者を、アスピリンに加えてチカグレロールまたはプラセボのいずれかを投与する2群(合計19,220人)に分け、39.9か月間(追跡期間の中央値)の虚血性心血管イベントの発生率を検討した。その結果プラセボ群と比較し、チカグレロール群の方が大出血の発生率が高かったものの、虚血性心血管イベントの発生率は低い結果となった。