SGLT2阻害薬に関連する論文がLANCETに2報掲載されたので紹介させて頂きます。その他、経口のGLP-1受容体作動薬の臨床試験の結果を取り上げております。また、糖尿病性腎臓病に関連した新たな医薬品の臨床試験の結果や、糖尿病性腎臓病を抑制するSGLT2阻害薬の機序が解明された記事を取り上げており、興味深い内容となっておりますので是非ともご確認ください。

2型糖尿病における糖尿病性腎臓病を対象とした開発医薬品の第Ⅱ相臨床試験の結果について (9月20日)

帝人ファーマ株式会社は、2型糖尿病における糖尿病性腎臓病を対象疾患として開発を進めている医薬品(開発コード:TMX-049)について、米国で実施している第Ⅱ相臨床試験の有効性に関する主要評価項目を達成した事を発表した。

「TMX-049」は帝人ファーマが創製した新規非プリン型キサンチンオキシダーゼ阻害薬で、生体内でキサンチンオキシダーゼという酵素に対して選択的に阻害活性を示すことにより、尿酸生成を強力に抑制するのが特徴となっている。本試験は、アルブミン尿を有する2型糖尿病患者を対象に、プラセボと比較した無作為化二重盲検比較試験で、「TMX-049」を1日1回、12週間反復経口投与したときの有効性と安全性を検討し、主要評価項目は腎障害の指標である尿アルブミン/クレアチニン比の変化量(対数変換値)としている。試験の結果、本剤はプラセボと比較して統計学的に有意な改善が認められ、主要評価項目を達成した。また、安全性について新たな懸念は認められなかった。帝人ファーマは、「TMX-049」が新規の糖尿病性腎臓病治療薬として、慢性腎臓病の患者さんの治療およびQOL向上に貢献することを目指し、早期上市に向けて今後も開発を進めると発表している。

経口セマグルチドにおけるPIONEER試験の探索的解析結果について (9月19日)

ノボノルディスクは、経口セマグルチドがベースラインのHbA1c値に関わらず、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善したというPIONEER試験の探索的解析結果を発表した。

本解析はPIONEER1~5、7、8試験の参加者5,675名から得られたデータを、試験ごとにベースラインのHbA1c(≦8.0%、>8.0≦9.0、>9.0%)にグループ分けを行った。HbA1c7.0%未満を達成した2型糖尿病患者の割合は、全ての試験における全ベースラインのHbA1cサブグループにおいて、経口セマグルチド7mgおよび14mgは対象群(プラセボ、ジャディアンス、ジャヌビア、ビクトーザ)を上回った事が確認された。また安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬全般の安全性プロファイルと同様であり、皮下投与セマグルチドでみられた安全性プロファイルと類似していた。

GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の比較試験がLANCETに掲載 (9月17日)

週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬のセマグルチドはSGLT2阻害薬のカナグリフロジンに対して、HbA1cの低下効果と体重減少効果が勝ることがセマグルチドの第3相臨床試験のSUSTAIN8で確認され、記事がLANCETに掲載された。

本試験は、メトホルミンでコントロールが不良の2型糖尿病患者739人を対象に、週1回のセマグルチド1.0㎎(367人)と、SGLT2阻害薬のカナグリフロジン300㎎(372人)を上乗せし、有効性と安全性を比較した。主要評価項目は投与後の52週のHbA1cのベースラインからの変化、副次評価項目も投与後52週で体重のベースラインからの変化を検討している。結果、セマグルチド1.0㎎はカナグリフロジン300㎎に対してHbA1cは-0.49%と統計学的な有意な差を示し、体重減少も-1.06㎏と統計学的な有意な差が示された。安全性はセマグルチドで胃腸障害が184人(47%)と最も多く、カナグリフロジンは尿路感染症が136人(35%)で最も多かった。有害事象による治療中止はセマグルチドで38人(10%)、カナグリフロジンで20人(5%)であった。週1回のセマグルチド1.0㎎は、メトホルミン療法でコントロールできない2型糖尿病患者のHbA1cおよび体重の減少において、カナグリフロジン300㎎よりも優れた事が確認された。

トレラグリプチンコハク酸塩錠の禁忌等に係る「使用上の注意」の改定について (9月6日)

厚生労働省は、2型糖尿病治療薬のトレラグリプチンコハク酸塩錠(製品名:ザファテック)の使用上の注意に対し、禁忌の項で「高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者」に関する記述の削除などを求める改訂指示を行った。

本改訂は臨床試験や専門委員の意見を踏まえた調査の結果を受けた措置であり、これにより高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者に本剤の投与が可能となった。また、用法・用量の項で高度腎機能障害患者/末期腎不全患者の投与量なども新たに記載された。

2型糖尿病患者における腎不全の予防効果をみたSGLT2阻害薬のメタ解析結果がLANCETに掲載 (9月5日)

SGLT2阻害薬の複数の試験のメタ解析を行った結果、SGLT2阻害薬は糖尿病患者の腎不全のリスクを低減する事が確認され、記事がLANCETに掲載された。

本試験は腎不全に対するSGLT2阻害薬の効果を検証するために、3つのSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン)の4つの試験(EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、CREDENCE、DECLARE–TIMI58)のメタ解析を行い、腎臓病による透析、移植、死亡のリスクの検証を行った。4つの研究から38,723人の参加者のデータを取得し、252人の参加者が透析、移植、死亡が確認され、SGLT2阻害薬はプラセボと比較し、透析、移植、または腎疾患による死亡リスクが33%減少する事が確認された。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の透析、移植、または腎疾患による死亡のリスクを軽減し、急性腎障害に対する保護効果が確認された。

糖尿病性腎臓病を抑制するSGLT2阻害薬の機序が解明 (9月3日)

横浜市立大学の研究グループは、SGLT2阻害薬が示す2型糖尿病患者のアルブミン尿抑制効果に朝の家庭血圧の降圧が重要である事を発表し、記事がBMSに掲載された。

本研究はSGLT2阻害薬による臓器保護作用の本態解明を目的として、糖尿病における心血管腎臓病抑制のための重要な治療標的とされるアルブミン尿に対する改善効果とその機序について、特に血圧への影響に着目して行われた。アルブミン尿を呈する2型糖尿病性の腎臓病患者85名を対象に、Y-AIDA研究(2型糖尿病におけるダパグリフロジンのアルブミン尿抑制効果に関する多施設共同試験)を行い、ダパグリフロジンの効果について、主要評価項目としてアルブミン尿への影響について検討するとともに、空腹時血糖、HbA1c、血圧(診察室血圧、家庭血圧)などに与える影響について多面的に解析を行った。

その結果、ダパグリフロジンの24週間投与により、主要評価項目のアルブミン尿の減少が認められ、副次評価項目ではBMI、診察室血圧、空腹時血糖、HbA1cの改善が認められた。また、通信システムによる自動通信機能を利用しての家庭血圧測定の結果では、朝(起床後)血圧、晩(就眠前)血圧、夜間就眠中血圧、そして家庭血圧変動指標の改善が認められた。さらに、重回帰分析の結果では、朝(起床後)家庭血圧の改善がダパグリフロジンによるアルブミン尿の抑制に関連している事が明らかとなった。この結果は、2型糖尿病に対するダパグリフロジンは、特に朝の家庭血圧の改善効果が、糖尿病性腎臓病進行の原因となるアルブミン尿を抑制する効果に関連していることが示された。