メトホルミンの腎機能障害に関して、安全対策調査会は見直しを行い、その検討結果を公表しました。また、ダパグリフロジンにおける心不全治療の試験結果のプレスリリース記事を取り上げています。

ダパグリフロジンの心不全治療に関する第Ⅲ相DAPA-HF試験の結果 (8月26日)

アストラゼネカは、SGLT2阻害薬のダパグリフロジンの慢性心不全に対する効果を検証したDAPA-HF試験に関して、主要評価項目である心血管死と心不全の悪化(入院もしくは心不全による緊急受診)で有意なリスク減少が得られたことを発表した。

本試験は、2型糖尿病合併および非合併の、心不全の標準治療を受けている左室駆出率が低下した心不全の患者さんを対象に実施されている。安全性プロファイルは、これまでに確立された本剤のプロファイルと一貫した事を発表しているが、リスク減少に関する詳細な結果は、8月31日からパリで開催される欧州心臓病学会(ESC)会議で発表される予定としている。心不全患者を対象に心血管イベントを主要評価項目とした臨床試験で有意なリスク減少が示されば、SGLT2阻害薬としては世界で初めてとなる。

ダパグリフロジンがEUで2型糖尿病に関する添付文書を改訂 (8月19日)

アストラゼネカは、ダパグリフロジンの成人2型糖尿病患者さんを対象とした第Ⅲ相DECLARE-TIMI58試験において、心血管アウトカムや腎イベントの発症が有意に低下した事を踏まえ、EUにおいて販売承認内容に追加することを欧州委員会が承認したことを発表した。

本試験は、ダパグリフロジンの有効性に関する主要評価項目として設定された2つの評価項目のうち、心不全による入院または心血管死の複合評価項目において、プラセボとの比較で統計学的に有意な低下を示した。もう一つの主要評価項目である主要心血管イベントの発現頻度は、ダパグリフロジン群で統計学的な有意差は認められなかった。DECLARE-TIMI58試験データの添付文書への追加については現在米国および中国において規制当局の審査が行われている。本邦においては、心血管イベント、心不全あるいは死亡のリスク低下を効能とした承認は取得していない。

メトホルミンの腎機能障害の見直しについて (8月6日)

厚生労働省は医薬品・医療機器等安全性情報365号を公表し、メトホルミンの禁忌である「腎機能障害」等の見直しの検討を行った結果、使用上の注意の改訂による注意喚起を行うよう指示したことを発表した。

メトホルミンは乳酸アシドーシスのリスクがあり、特に腎機能障害患者ではメトホルミンの排泄が遅延し血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスのリスクがさらに高まることが懸念されたため、腎機能障害患者には禁忌となっていたが海外の添付文書の状況や副作用報告などを踏まえ、2019年5月に開催された安全対策調査会での検討を踏まえてメトホルミンの添付文書の改訂が行われた。改訂内容は、メトホルミンの低投与量製剤と高投与量製剤の禁忌はともに重度の腎機能障害患者(eGFR<30)のみに変更となった。添付文書の改定に伴い、軽度から中等度の腎機能障害患者に投与が可能となったが、本剤を投与する場合にはメトホルミンの血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性があるため慎重に投与する必要がある。