ご存知の通り糖尿病は患者さんのQOLや医療コストに悪影響を及ぼします。今回のレポートでは、他の疾患と比べてどの程度医療費が高額となるのか、糖尿病が心筋梗塞発症後の予後にどのように影響するのか、食事療法における脂肪の摂取について等、新たな知見をご紹介しています。

若年糖尿病患者のAMI後の健康状態について (8月23日)

急性心筋梗塞(AMI)を発症した若年糖尿病患者は、AMIの予後に糖尿病有無が関連しないことを示唆する報告がJournal of the American Heart Associationに掲載された。 VIRGO studyに登録された18〜55歳のAMI(糖尿病の42.6%)3501例のデータを使用して、AMI後の最初の12か月間の糖尿病と健康状態の関連を調査した結果、ベースラインにおいて糖尿病は健康状態悪化に関連していたものの、その後のQOLや精神状態には関連していないことがわかった。

非糖尿病者においてHbA1cと癌にU字型の関連 (8月9日)

HbA1cと非糖尿病患者のがんのリスクにU字型の関連性があることを示唆する報告がActa Diabetologicaに掲載された。2005年から2016年にかけて東京の大規模な病院に来院した、健康診断を含めた糖尿病を患っていない77,385例を対象にした後ろ向きの縦断的研究であり、追跡期間1,588日(中央値)において、HbA1c低値群(5.0%未満)とHbA1c高値群(7.5%以上)でがんのリスクが有意に高いことがわかった。さらに本研究において、低HbA1cは乳癌および女性生殖器癌の発生率と関連している可能性があることもわかった。

糖尿病性腎症の予後におけるタンパク尿の重要性 (7月31日)

インスリンの機能低下による代謝異常を特徴とする2型糖尿病で腎疾患を併発した患者において、タンパク尿の有無が腎機能の経過や生命予後に重要な要因となっていることを明らかとした報告を金沢大学が発表した。本研究はDiabetes Careに掲載された。 全国18の医療機関の研究者と共同で、昭和60年1月から平成28年12月までの間に各医療機関において腎臓組織の一部を採取し検査を実施した腎生検レジストリーを解析し、タンパク尿を示さない患者群はタンパク尿を示す患者群より、腎不全などの腎症進行イベントを起こす率および生存率について、いずれも有意にリスクが小さいことが明らかとなった。

2型糖尿病リスクにおける遺伝的負荷と食事脂肪における交互作用 (7月25日)

食事脂肪の質と遺伝的な負荷は、それぞれ2型糖尿病の新規発症に関連しているが交互作用はないことを示したメタ解析がBMJに掲載された。 1970年1月~2017年2月に発表された前向きコホート研究から、遺伝データが利用可能であり、食事脂肪の質およびヨーロッパ系の参加者における2型糖尿病の発生率について情報がある15件の研究、約10万例(追跡期間の中央値12年)が解析され、そのうち約2万例が2型糖尿病を発症していた。炭水化物の代わりに多価不飽和脂肪の摂取が増加すると2型糖尿病のリスクは減少し、一価不飽和脂肪では増加が認められた。食事脂肪と2型糖尿病のリスクに関する多遺伝子リスクスコアとの有意な交互作用は観察されなかった。 本報告のなかで「2型糖尿病の1次予防においては、2型糖尿病の遺伝的リスクプロファイル応じて個別に食事脂肪の種類を推奨する方法を支持しない」と結論付けられている。

健保組合加入者における糖尿病の医療費 (7月19日)

生活習慣関連医療費の約9割を入院外が占め、受診率の高い糖尿病や高血圧症などに多くの医療費がかかっていたことが、健保連の発表により明らかとなった。健保連が健保組合加入者の生活習慣関連10疾患を平成29年度レセプトから分析した結果であり、入院外の疾患別1人当たり医療費は、糖尿病が本人で約5800円、家族で約2000円と、高脂血症や人工透析と比較しても高かった。