食事をした時間とは関係なく測定する随時血糖値を診断でどのように扱うべきか、糖尿病患者のメンタルケアの効果、長期間における強化血糖コントロールの効果といった、現在の糖尿病治療を見直す材料となり得る報告がされています。是非、内容をご確認いただき、糖尿病の治療方針についてディスカッションされる際の材料としてご活用ください。

随時血糖値が糖尿病診断の予測に有用である可能性 (7月19日)

糖尿病診断基準となる≧200 mg/dlを下回るレベルであっても、引き続き診断を継続するかどうかを判断する指標となり得ることがPLOS ONEで報告された。

糖尿病と診断されなかった942,446人の米国退役軍人についてレトロスペクティブに5年間追跡した結果、94,599人が糖尿病と診断され、随時血糖と糖尿病診断の関係を検証した。≧115mg/dlの場合、特異度は77%、感度は87%、≧130 mg / dlの場合、特異度は93%、感度は59%であった。外来診察で得られた血糖値を活用することで精密検査の必要性を判断し、糖尿病の予防的介入や早期発見につながる可能性があることが報告の中で述べられている。

糖尿病患者の抗うつ薬による死亡リスクの低減 (7月2日)

うつ病治療が糖尿病患者の死亡率の有意な減少と関連していたことを示唆する研究結果がThe Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismで報告された。

台湾の国民健康保険研究データベースを使用し、2000年以降において新たに診断された糖尿病およびうつ病患者の53,412例を同定した。 ほとんどの抗うつ薬(ATD)の使用は糖尿病患者の死亡率の有意な減少と関連していた(最高用量群では、ハザード比[HR] = 0.65、95%信頼区間[CI] = 0.59-0.71)。一方で、可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬(RIMA)については、総死亡率の減少ではなく増加と関連していることが見出された。(HR=1.48, 95%CI=1.09-1.99)

糖尿病性腎症の新規発症につながるリスク要因をAIで分析 (6月25日)

糖尿病性腎症について大分県の3年分の国保データベース(KDB)から抽出されたデータを基に、AIによる発症影響因子の分析をNECと仙台白百合女子大学が共同で分析したことをNECが発表した。

大分県内の2型糖尿病に罹患し、かつ糖尿病性腎症を発症していない約3000人を対象に、KDBの健診データ、医療レセプトデータを連結し、AIが分析した。 年齢やBMI、血圧などの62の因子から、糖尿病性腎症の新規発症に関連ある因子として、HbA1cや血清クレアチニンなど10の因子を絞り込んだ。関連のある因子について、新規発症者のグループと非発症者のグループ間の差による有意差検定を行った結果、新規発症者において、HbA1c が高い、血清クレアチニンが高い、糖尿病用剤_年間月数が多い、服薬血糖ありの割合が高い、LDL が低い、単独タンパク尿のある割合が高い、血管拡張剤_年間月数が少ないといった有意な傾向があった。

15年間の追跡調査における2型糖尿病患者の強化血糖コントロール (6月6日)

強化血糖コントロールによるレガシーエフェクトや、死亡率に対する有益性は認めらないことを示した研究報告がNEJMで報告された。 本試験のオリジナル試験において、2型糖尿病の退役軍人1,791例を対象に5.6年間(中央値)の強化血糖コントロール群と標準療法群で比較を行い、合計10年間追跡した後、登録された参加者(完全コホート)1,655例について観察を継続した。

合計15年の追跡期間において、強化血糖コントロール群の主要心血管イベントリスクの有意な低下は認められなかった(HR:0.91, 95%CI:0.78~1.06, p=0.23)。さらに全死因リスクについても、低下は認められなかった(同:1.02, 0.88~1.18)。糖化ヘモグロビン曲線が分離された長期間の間にのみ標準治療を受けた人より心血管イベントのリスクが低かった。