テプリズマブを用いた免疫療法によって1型糖尿病の発症を抑制した試験が世界で初めて報告され、記事がNEJMに掲載された。また、その他にロタウイルスワクチンが1型糖尿病リスクを減少させた研究結果や、中年期に発症した2型糖尿病とその後の脳梗塞リスクの関連についての報告を取り上げております。様々な研究結果が報告されておりますので、内容を是非ご確認ください。

ロタウイルスワクチンで1型糖尿病リスクが減少 (6月13日)

ミシガン大学の研究グループは、米国の小児147万人超の医療保険データを解析した結果、ロタウイルスワクチンを完全接種した小児は未接種の小児に比べ、その後の1型糖尿病発症率が低かった事を発表し、記事がSCIENTIFIC REPORTに掲載された。

本研究は、全米規模の医療保険データベース「Clinformatics DataMart」から、2001~2017年に出生した147万4,535例の小児を対象としたコホート研究で、2006~2017年に出生したロタウイルスワクチン未接種の小児に比べ、完全接種した小児では1型糖尿病の発症リスクが33%低かった事が確認された。また、ワクチンの種類別に見ると、1価ワクチンを完全接種した小児では27%のリスク低下が認められたのに対して、5価ワクチンを完全接種した小児では37%とリスクの低下が大きかった。ロタウイルスワクチン接種が1型糖尿病の発生率の減少と関連している事が示唆された。

1型糖尿病の発症リスクを免疫療法によって抑制した世界初の試験 (6月9日)

イエール大学の研究グループは、免疫システムを標的とするテプリズマブの投与により、1型糖尿病リスクの高い人の発症を抑制できることを発表し、研究結果がNEJMに掲載された。

1型糖尿病の発症リスクが高い患者を対象に、テプリズマブ群44例とプラセボ群32例に14日間の投与を行い、1型糖尿病を発症するまで耐糖能を調べる検査を行い、1型糖尿病への進行の追跡調査を行った。結果、期間中に1型糖尿病の発症へ進行した割合は、プラセボ群で72%だったのに対し、テプリズマブ群では43%と低いことが示された。また、1型糖尿病を発症するまでの期間の中央値は、プラセボ群で24.4ヵ月であったのに対し、テプリズマブ群では48.4ヵ月であった事が確認された。テプリズマブ群は、1型糖尿病のリスクの高い人において発症の抑制が示された。

中年期に発症した2型糖尿病とその後の脳梗塞リスクの関連 (6月5日)

40~59歳の中年期時点で2型糖尿病だった人は、60歳以降の高齢期に脳梗塞や脳動脈閉塞症を発症するリスクが上昇することがスウェーデンの双子を対象に実施した症例対照研究で報告され、記事が「Diabetologia」に掲載された。

本研究は、スウェーデンの双子を登録した「Swedish Twin Registry」のデータから60歳になる前に脳血管疾患を発症していない双子33,086人を対象に、糖尿病と脳卒中リスクの関連を検証したコホート内症例対照研究である。参加者のうち3.8%(1,248人)が40~59歳の時点で2型糖尿病を有し、9.4%(3,121人)が60歳以降の高齢期に脳血管疾患を発症した。年齢や性、喫煙やBMIなどの因子で調整して解析した結果、中年期の2型糖尿病は高齢期の脳梗塞と脳動脈閉塞症のリスクの増加が示されたが(オッズ比はそれぞれ1.29、2.03)、一方くも膜下出血および頭蓋内出血はは関連しない事が示された(オッズ比はそれぞれ0.52、0.78)。