免疫チェックポイント阻害薬投与後に1型糖尿病を発症するメカニズムが世界で初めて解明されました。2型糖尿病患者における大腿骨近位部骨折と全死亡リスクとの関係や、NAFLD患者の肝線維化進展のリスク因子との関係をみた論文を紹介しています。糖尿病に関する新たな研究結果になりますので内容を確認し、知識補完にお役立て下さい。

2型糖尿病を併存するNAFLD患者の肝線維化の進展リスク (5月21日)

中年期の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者は、2型糖尿病が併存すると高度な肝線維化への進展リスクが高まる可能性があることが大垣市民病院(岐阜県)の研究により報告され、記事が「Journal of Gastroenterology and Hepatology」に掲載された。

本研究は、NAFLD(36~64歳)および重症度の低い肝線維症(FIB-4 Indexが1.3未満)の患者1,562人を対象に、中央値で7.5年の追跡した結果、追跡期間中に186人(11.9%)で高度な肝線維化が確認された。高度な肝線維化の3年、5年、7年および10年累積発症率は、2型糖尿病のない患者(1,077人)ではそれぞれ3.6%、5.0%、8.2%および12.9%だったのに対し、2型糖尿病を併存した患者(485人)ではそれぞれ6.1%、10.4%、16.7%および24.0%であった。また、年齢や喫煙習慣、BMIなどで調整した多変量解析の結果、「50歳以上」「血清アルブミン低値(4.2g/dL未満)」「2型糖尿病の併存」の3つの因子はいずれも高度な肝線維化への進展の独立したリスク因子であることが明らかとなった。著者は「2型糖尿病の併存は、50歳以上および血清アルブミン低値に加えて、中年期NAFLD患者における高度な肝線維化への進展の独立したリスク因子であることが分かった」と述べている。

大腿骨近位部骨折で2型糖尿病患者の全死亡リスクが増加 (5月17日)

日本人の2型糖尿病患者は、大腿骨近位部骨折があると全死亡リスクが高まる可能性があることが九州大学の研究により報告され、記事が「Journal of Diabetes Investigation」に掲載された。

本研究は、4,923人の2型糖尿病患者(平均年齢65歳、うち男性2,790人)を対象に、中央値で5.3年間追跡した結果、追跡期間中に大腿骨近位部骨折(n=110)、上肢骨折(n=801)、CVD(n=1,344)、ESRD(n=104)の発症が確認された。追跡期間中に309人が死亡し、解析の結果、大腿骨近位部骨折のある患者ではそうでない患者に比べて全死亡リスクが有意に高かった。一方、上肢骨折と全死亡リスクとの間に有意な関連は認められなかった。また、CVDやESRDを併存した患者では、これらを併存していない患者に比べて全死亡リスクは有意に高いことも確認された。さらに、CVDおよびESRDで調整した解析でも、大腿骨近位部骨折と全死亡との関連は有意であった。なお大腿骨近位部骨折患者の死亡原因は、感染症(40.0%)、悪性新生物(25.0%)、CVD(15.0%)であった。股関節骨折は、CVDおよびESRDの併存とは関係なく、2型糖尿病の日本人患者における死亡リスクの増加と関連性が確認された。

免疫チェックポイント阻害薬投与後に1型糖尿病を発症するメカニズムを解明 (5月10日)

大阪大学は、免疫チェックポイント阻害薬投与後に1型糖尿病を発症するメカニズムの一端を明らかにした事を世界で初めて発表し、記事が「Diabetes Care」に掲載された。

免疫チェックポイント阻害薬投与後に1型糖尿病を発症した患者の膵臓では、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が著明に減少しており、膵β細胞近傍・膵島内周囲および膵全体でTリンパ球が浸潤していることが確認された。さらに、ごくわずかに残存しているβ細胞および膵島でPD-L1が低下していることも明らかとなった。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞のPD-L1発現による免疫逃避機構を阻害し、Tリンパ球によるがん細胞攻撃を促進する。このことから、免疫チェックポイント阻害薬により活性化されたTリンパ球がβ細胞を攻撃したためにβ細胞が減少し、さらにβ細胞でのPD-L1の低下によりTリンパ球からの攻撃を抑制できず、1型糖尿病が引き起こされるのではないかと考えられた。