野菜の摂取量と2型糖尿病の発症リスクに関する報告や味覚伝達神経を特定した研究結果などを紹介しております。また、糖尿病患者の積極的な降圧治療と合併症リスクとの関係についての研究結果が米国心臓学会(AHA)にて発表されております。内容を確認し、治療目標について先生とのディスカッションにお役立てください。

野菜の摂取量と2型糖尿病の発症リスクとの関連 (5月11日)

沖縄野菜の摂取量と2型糖尿病の発症リスクについての試験結果が発表され、記事がJournal of Epidemiologyに掲載された。
本研究は、日本における大規模な集団ベースの前向き研究で、沖縄在住の45〜74歳の10,732人の参加者(男性4,714人、女性6,018人)を対象に、138項目の食物摂取頻度質問票(FFQ)の回答を用い、7項目の沖縄野菜より摂取量を推定した。その摂取量によって3つのグループに分類し、その後沖縄野菜の摂取量が一番少なかったグループを基準に、その他のグループのその後の糖尿病発症リスクとの関連を検討した。結果、5年間で2型糖尿病の新規症例216人(男性123人、女性93人)が報告されたが、男女ともに沖縄の野菜の摂取量と2型糖尿病の発症リスクに統計的な有意差が認められなかった。

飲食物の甘味を伝える神経細胞を発見 (5月8日)

生理学研究所と東京大学の研究グループは、飲食物の甘味を伝える神経細胞を発見し、甘味の心地良さに依存するメカニズムを解明した研究結果は発表し、記事が「Cell Reports」に掲載された。
本研究ではマウスをモデルに、味覚情報伝達の重要な中継点である脳幹において、味覚伝達神経の探索を行った。脳幹の中でも橋結合腕傍核(PBN)とよばれる部位において味刺激に応答する神経細胞が偏在しており、転写因子の一つであるSatB2を発現している可能性が示唆された。SatB2が味覚伝達神経の目印であると仮定し、この神経細胞を除去したところ、他の味に対する反応は正常だったのに対し、甘味のみをほとんど感じられなくなることが発見された。一方、味溶液摂取中に脳活動を計測したところ、この神経細胞は甘味にのみ選択的に応答する事が明らかとなった。また、この神経の活動を人工的に活性化すると、無味の溶液であってもまるで甘味溶液のように好んで摂取する事も明らかとなった。この神経は、味覚のもう1つの中継点として知られる視床の後内側腹側核に接続しており、さらに、たとえ溶液の摂取がない場合でもマウスは視床に接続するこの神経回路が人工的に活性化された状態を好むことから、この神経回路は甘味を味わった際に生じる心地よさを引き起こす上で重要な役割を担っている事が明らかとなった。

糖尿病患者の積極的な降圧治療と合併症リスクとの関係 (4月29日)

血圧を130/80mmHg以下にコントロールするために積極的な降圧治療を受けた2型糖尿病患者は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡のリスクが低い事が報告され、記事が米国心臓学会(AHA)が発行するHypertensionに掲載された。
本研究は、国際研究のADVANCE試験の一環として、4年以上続いた2型糖尿病患者約11,000人の結果の分析に基づいており、研究期間中に心臓発作、脳卒中、糖尿病性腎症、糖尿病網膜症を含むカテゴリーで837件の死亡と、966件の主要な血管イベントが確認された。解析の結果、積極的な降圧治療を受けた患者はそうでない患者に対して血管イベントの発症リスクが9%低く、死亡リスクが14%低い事が確認された。