今回はSGLT2阻害薬に関するトピックを取り上げています。SGLT2阻害薬の重大な副作用による使用上の注意改訂、腎臓および心血管アウトカムへの効果について、重要な発表がされていますので、是非ご確認頂き、安全性を考慮にいれた血糖降下薬の効果について先生のお考えを伺う際等にお役立てください。

 

SGLT2阻害薬の「使用上の注意」の改訂 (5月9日)

医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、SGLT2阻害薬の「使用上の注意」の改訂について以下の2点を公表した。(1)「重要な基本的注意」の尿路感染、性器感染に関する記載の項に、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)に関する注意を追記  (2) 「重大な副作用」の項に「外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)」を追記。

改訂の背景として、国内外の症例報告、複数のSGLT2阻害剤(ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン)でフルニエ壊疽又は壊死性筋膜炎の副作用報告数が、データベース全体から期待される値より高いことが統計学的に示されたこと、薬理作用の影響を否定できないことが発表された。

 

EMPA-REG OUTCOME試験における複合腎・心血管イベントへの効果 (4月15日)

EMPA-REG OUTCOME試験における複合腎・心血管イベントへの効果は、全体集団、ベースライン時の顕性アルブミン尿を伴う糖尿病性腎臓病(DKD)患者、およびその他の糖尿病患者において一貫していたことが、国際腎臓学会のWorld Congress of Nephrology 2019にて公表された。

本試験の全体集団において、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比較し、複合腎・心血管イベントリスクを43%低下させた(HR:0.57、95%CI:0.46-0.70)。腎イベントリスクが高い集団である、ベースライン時の顕性アルブミン尿を伴う DKD 患者においては54%低下させ(HR:0.46、95%CI:0.31-0.68)、その他の患者においても41%低下させた(HR:0.59、95%CI:0.46-0.75)。

 

SGLT2阻害薬による糖尿病性腎症患者の腎アウトカム改善効果について (4月14日)

糖尿病性腎症患者において、追跡期間2.62年(中央値)で、カナグリフロジン群の方がプラセボ群よりも腎不全および心血管イベントのリスクが低かったというCREDENCE試験の研究結果がNEJMで発表された。

本試験は、糖尿病性腎症を有する2型糖尿病患者4,401例を対象に、プラセボを対照としたカナグリフロジン100mg投与による腎アウトカムを検証した無作為化二重盲検比較試験であり、症例における糖尿病罹病期間は平均16年、ベースラインのHbA1cは平均値8.3%、平均eGFRは56ml/min/1.73m2、平均Alb尿値は927mg/gCreであった。

末期腎不全への進行、血清Creの倍増、腎疾患による死亡といった腎アウトカムに関しては34%のリスク減少を示した(HR:0.66、95%CI:0.53-0.81、p<0.001)。さらに心血管死、心筋梗塞、脳卒中といった主要心血管イベントおよび心不全による入院も減少させ、下肢切断率や骨折率の上昇について本試験においては認めらなかった。