日本人研究者らにより解明された糖尿病の新たな発症機序や、将来の糖尿病発症リスクに対する要因について紹介しています。さらにJAMAで発表された2型糖尿病患者に対する行動介入の有効性について新たな知見についても紹介していますので、ドアオープナーとして情報提供にご活用ください。

 

糖尿病・脂肪性肝炎の新たな発症機序の解明 (3月19日)

東京大学および国立国際医療研究センター研究所の研究グループは、絶食・摂食で大きく変化する肝臓での小胞体ストレスとそれに対する応答に注目し、Sdf2l1という分子の果たす役割を明らかにしたことを発表した。 Sdf2l1の発現を低下させると小胞体ストレスが過剰となりインスリン抵抗性や脂肪肝が生じ、Sdf2l1の発現誘導が低下した肥満・糖尿病のモデルマウスにおいて、発現を補充するとインスリン抵抗性や脂肪肝が改善した。加えてヒトの糖尿病症例の肝臓において、Sdf2l1の発現誘導がインスリン抵抗性や脂肪性肝炎の病期の進行と相関することが示された。

このことから、摂食に伴う小胞体ストレスに対する適切な応答が重要であると共に、その応答不全が糖尿病・脂肪性肝炎の原因となることが示された。東大によると「今後は、Sdf2l1やその発現量が、糖尿病・脂肪性肝炎の治療標的やバイオマーカーとなることが期待されます。」と述べている。

 

青年期のBMIが22㎏/m²以上で将来の糖尿病発症リスクが高まる (3月19日)

順天堂大学は、大学卒業生(男性661名、平均55歳)の糖尿病罹患状況と在学時の体格との関連を調査した(観察期間:平均32年)ところ、青年期の体格が正常であっても、BMIが22㎏/m²以上あると、将来の糖尿病発症リスクが高まることを明らかにした。

本研究は「PLOS ONE」に掲載され、同大学によると「本研究により、将来の糖尿病の発症には青年期の僅かな体重の増加が影響していることが初めて示され、我が国の予防医学を推進するうえで青年期からの体重コントロールの重要性が示唆されました。」と述べている。

 

糖尿病患者の行動介入の有効性について (3月5日)

2型糖尿病患者において標準的な治療と比較して行動介入により、身体活動の持続的な増加と座位時間の減少をもたらしたという研究結果がJAMAに掲載された。座りがちな生活習慣を有する2型糖尿病患者300人を対象に、行動介入群または標準治療群に150名ずつランダムに割り付けて3年間観察した。

行動介入群では標準治療群に比べて身体活動や身体運動の量を表す単位であるMETsにおいて、3.3METs・時改善した。さらに中強度以上の身体活動量は1日当たり6.4分、軽度の身体活動量は1日当たり0.8時間、それぞれ行動介入群が有意に多く、1日当たりの座位時間は0.8時間有意に少ない結果であった。