厚生労働省は2017年の糖尿病の通院患者数を発表しました。また糖尿病患者に対する適切な検査や処方が行われている割合について調査報告や、糖尿病や脂肪性肝炎、またステロイドによる糖尿病の発症メカニズムを解明した記事などを取り上げております。今後の糖尿病の治療に関わる興味深い報告になりますので、内容を是非ご確認ください。

ステロイドによる糖尿病発症のメカニズムが解明 (3月1日)

大阪大学の研究グループは、ステロイドによって生じる糖尿病等の代謝異常に脂肪細胞のグルココルチコイド受容体が関与することを明らかにし、記事が「Endocrinology」に掲載された。

脂肪細胞にあるグルココルチコイド受容体を除去したマウスでは、健康的な肥満が誘導され、ステロイドによる脂肪肝やインスリン抵抗性が改善した事が確認された。本研究によって、ステロイドによって糖尿病が起こるメカニズムの一端が明らかとなった。

厚生労働省は糖尿病の通院患者数を発表 (3月1日)

厚生労働省が発表した「2017年患者調査の概況」によると、糖尿病の通院患者数は過去最多の328万9,000人(男性184万8,000人、女性144万2,000人)である事が報告された。 本調査は3年ごとに実施されており、糖尿病の通院患者数は前回の調査(2014年)の316万6,000人から12万3,000人増えた結果となっている。調査施設は全国の医療施設のうち、病院6,427施設、一般診療所5,887施設、歯科診療所1,280施設が抽出され、これらの施設を利用した入院・外来患者約228万人、退院患者約115万人が対象となっている。

糖尿病や脂肪性肝炎の新たな発症メカニズムを解明 (2月27日)

国立国際医療研究センターと東京大学の研究グループは、食事で発現誘導される遺伝子のSdf2l1(stromal cell-derived factor 2 like 1)の発現低下が、糖尿病や脂肪性肝炎の発症や進行に関わることを明らかにし、研究成果が「Nature Communications」に掲載された。

Sdf2l1は食事により発現が誘導されるが、肥満やインスリン抵抗性があると発現量が低下し、糖尿病や脂肪性肝炎の病期の進行と相関することが確認された。

糖尿病患者に対する適切な検査や処方が行われている割合について (2月8日)

国立国際医療研究センターと東京大学の研究グループは、大規模レセプトデータの分析結果から糖尿病治療の質は向上しているのに対して眼底や尿アルブミンの検査の実施率は低い事を報告し、研究結果が国際糖尿病連合(IDF)の発行する「Diabetes Research and Clinical Practice」に掲載された。

本研究は、2006年から2016年までの大規模なレセプトデータで374万人超を対象としており、糖尿病患者に対する適切な検査や処方が行われている割合についての経年変化を分析した。

結果、血糖検査や脂質検査を実施した割合がそれぞれ約95%と約85%で高い事が報告され、また降圧治療のACE阻害剤やARBが処方されている割合や脂質合併症の併存患者にスタチンが処方されている割合は上昇傾向にある事が確認された。一方、糖尿病網膜症の検査を受けている割合は約40%、尿アルブミン検査の実施率は約24%と、両検査の実施率は低い事が確認された。