既知の治療標的にも関わらず治療アプローチが確立されていない治療法、さらにiPS細胞を活用した治療といった画期的な治療法に関する有効性を示唆する研究報告がされています。また使用経験が豊富な薬剤の新たな効果を示唆する報告についてもご紹介しておりますので、是非ご確認頂き情報提供の一環としてご活用ください。

新たな作用機序の2型糖尿病治療薬が第2相試験で有効性を確認 (1月16日)

米ノースカロライナ州に拠点を置くvTv Therapeutics社が開発中の選択的に肝臓のグルコキナーゼを活性化させる経口糖尿病治療薬(TTP399)が、メトホルミンで治療中の2型糖尿病患者を対象とした第2相試験で、低血糖を来すことなく6カ月後の血糖コントロールを改善した事が確認され、記事が「Science Translational Medicine」に掲載された。

グルコキナーゼは2型糖尿病における既知の治療標的であり、他にもグルコキナーゼを標的とした薬剤の開発が進められているが、低血糖や中性脂肪値の上昇などの副作用の問題で、臨床的に成功していない。

本試験では、メトホルミン治療中の2型糖尿病患者190人を対象に、メトホルミンにTTP399(1日800mg)を併用する群とプラセボまたはDPP-4阻害薬のシタグリプチンを併用する群に無作為に割り付けて比較検討した結果、メトホルミンとTTP399を併用した群では、プラセボまたはシタグリプチンを併用した群に比べて6カ月後のHbA1c値が-0.9%と有意に低下したことが明らかになった。安全性に関しては、TTP399の併用群で重篤な低血糖はみられず、中性脂肪値の上昇も認められなかった。

iPS細胞からインスリン産生細胞を作製し再生医療や細胞治療へ活用する研究が開始 (1月10日)

第一三共と東京工業大学は、三菱UFJキャピタルの出資を受け、iPS細胞からインスリン産生細胞を作製し、再生医療や細胞治療への活用を目指す共同研究を開始した事を発表した。

東京工業大学が開発したヒトiPS細胞から膵β細胞を高率に作製する方法と第一三共の技術を融合させることにより、生体内の膵β細胞に近いiPS細胞由来インスリン産生細胞が作製可能であることを見出した。本研究ではiPS細胞由来のインスリン産生細胞の更なる性能の向上及び作製法の改良を行い、従来のインスリン治療では血糖コントロールが困難でアンメットメディカルニーズが高い、重症1型糖尿病に対する革新的な治療法として、実用化に向けた検討が進められる。

糖尿病網膜症の予防にスタチン治療が有用であることを示唆 (1月10日)

スタチンが糖尿病網膜症の発症リスクを低下させる可能性があることが、台湾のコホート研究で発表され、記事が「JAMA Ophthalmology」に掲載された。本試験は、脂質異常症を合併した2型糖尿病患者を対象に、スタチン服用群と非服用群で糖尿病網膜症の発症リスクが検討された。

それぞれの平均追跡期間7.6年と7.3年における糖尿病網膜症の発症は、スタチン服用群が10.6%で非服用群の12.0%に対して有意に低いことが確認された。またスタチン服用群は、主要な有害心血管イベント(HR:0.81)、糖尿病性神経障害(HR:0.85)および糖尿病性足潰瘍(HR:0.73)の新規発症リスクの低下が確認された。