第54回欧州糖尿病学会(EASD)の年次集会が10/1から10/5にドイツのベルリンにて開催され、それに伴い開発品の試験結果や、既存品の新たな注目すべき臨床試験結果が発表されています。また米国眼科学会の年次総会「AAO 2018」においてもメトホルミンの新たな効果について発表されているため、記事をご確認頂き、最新研究について情報提供活動等にお役立てください。

メトホルミンが加齢性黄斑変性症のリスクを軽減できることを示す新しい研究 (10月28日)
メトホルミンを服用した2型糖尿病患者において、加齢黄斑変性(AMD)の発生率が有意に低いことを示す研究が、米国眼科学会第122回年次総会「AAO 2018」で発表された。この研究はメトホルミンの抗炎症作用および抗酸化作用が、糖尿病をコントロールしながらAMDの予防を果たすことを示唆している。

台湾国民健康保険研究データベースを使用し、2001年1月から2013年12月までに2型糖尿病と診断されたすべての患者のデータを収集し、メトホルミンを服用した患者(45,524例)と未服用の患者(22,681例)を13年間追跡した結果、メトホルミン服用群におけるAMDを発症するリスクが有意に低いことが発見された。

ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー、トラゼンタ®(リナグリプチン)のCARMELINA®試験の結果を発表 (10月18日)
27ヶ国、600以上の施設から成人2型糖尿病患者6,979人が参加し、中央値2.2年にわたり観察を行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験であるCARMELINA試験の結果が、第54回欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会にて発表された。

本試験において、標準治療にリナグリプチンを上乗せした場合に、プラセボ群と比較して、同等の心血管安全性を示し、主要評価項目を達成した。また重要な副次複合評価項目である腎複合エンドポイントに関してもプラセボと同等の安全性を示し、心血管アウトカムの一つのエンドポイントである、心不全による入院についても、リナグリプチンはプラセボと比較してそのリスクを増加させないことが示された。

リリーの新規の超速効型インスリン(URLi)2つの第Ⅲ相臨床試験において、1型および2型糖尿病患者に対し有効性に関する主要評価項目を達成 (10月17日)
URLi(Ultra Rapid Lispro)はヒューマログの有効成分であるインスリン リスプロの皮下からの吸収を早めた新規の「食事時インスリン製剤」であり、糖尿病に罹患していない人々のインスリンの動態により近づけることで良好な食後血糖コントロールが行えるように開発された。

2つの第Ⅲ相試験、PRONTO-T1D試験およびPRONTO-T2D試験において、それぞれ1型および2型糖尿病患者を対象に、URLiの有効性と安全性がヒューマログと比較して評価された。両試験において、ベースラインから26週時のHbA1cの低下についてURLiのヒューマログに対する非劣性が示され、主要有効性評価項目が達成された。また、両試験において、URLiは食事負荷試験の食後1時間および2時間の血糖値変動幅をヒューマログに比較してより抑えることも示された。いずれの試験でも、試験参加者の報告による重症低血糖症・夜間低血糖症・全低血糖症の発生率に有意差は認められなかった。

肥満症治療剤「BELVIQ®」長期心血管疾患アウトカム試験における2型糖尿病の予防と寛解に関する新しいデータを欧州糖尿病学会で発表するとともにThe Lancetに掲載 (10月5日)
エーザイ株式会社は、肥満症治療剤lorcaserin hydrochloride(米国製品名「BELVIQ®」)の長期心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI61試験)における、2型糖尿病の予防と寛解に関する新しいデータについて、第54回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会において発表するとともに、The Lancetに掲載されたことを発表した。

本試験は過体重および肥満の成人患者で、心血管疾患をすでに有している、もしくは心血管疾患のリスク因子を伴う2型糖尿病を有する合計12,000人を対象に、「BELVIQ」10mg錠またはプラセボ錠を1日2回長期間投与し、主要な安全性評価として、主要心血管イベントの発生頻度を評価した試験である。

「BELVIQ」の長期投与群は、プラセボ群と比較してMACEの発生頻度が増加しないことが確認され、主要評価項目を達成した。試験解析の結果、境界型糖尿病患者において、「BELVIQ」投与群はプラセボ投与群と比較して、2型糖尿病への移行のリスクを19%抑制し、さらに正常血糖値への改善傾向を示した。

また、投与前に2型糖尿病を発症していた患者において、「BELVIQ」投与群はプラセボ投与群と比較して、正常血糖値への改善が確認されるとともに、HBA1cの改善が確認された。特に、投与前におけるHBA1cが8%以上の2型糖尿病患者では、1年間の投与後において、プラセボ投与群と比較し、平均0.5%の改善が確認されました。さらに、2型糖尿病の患者の探索的評価において、「BELVIQ」投与群はプラセボ投与群と比較して、微小血管イベント(微小アルブミン尿症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害)の発生リスクを21%軽減した結果が示された。