10/1から10/5にドイツのベルリンにて開催された第54回欧州糖尿病学会(EASD)の年次集会においてSGLT2阻害薬に関する新たな試験結果が発表されております。また糖尿病腎症の進行を抑えるSGLT2阻害薬のメカニズムが解明されるなど、興味深い記事が多数報告されておりますので、是非内容をご確認ください。

SGLT2阻害薬による腎保護効果のメカニズムを解明 (10月17日)
放射光を使ってミクロの糸球体を見ることで、SGLT2阻害薬による糖尿病マウス糸球体1万個への作用を明らかにした旭川医科大学・九州大学・名古屋工業大学の共同研究論文がCell誌 とLancet誌の共同オープンアクセス誌である「EBioMedicine」に掲載された。

同大学によると、世界最高性能大型放射光施設であるSPring-8を用いて糸球体の可視化した結果、SGLT2阻害薬により、糖尿病による腎肥大を正常化したが、糸球体の数・大きさには変化がなかった。一方、腎臓の90%以上を占める尿細管の大きさが大きく変化したことで、SGLT2阻害薬の腎保護効果は、尿細管を標的としていることが明らかとなったとしている。

慢性心不全の2型糖尿病患者の左心室拡張機能に対するダパグリフロジンの効果 (10月8日)
慢性心不全の2型糖尿病患者の左心室拡張機能に対するダパグリフロジンの効果を検証した試験が発表された。日本人の2型糖尿病患者を対象に、ダパグリフロジン5mgを6カ月間投与する事で、左房容積係数(LAVI)および左室心筋重量係数(LVMI)が有意に改善し、心不全を有する2型糖尿病患者の左心室拡張機能に対しての有効性が示された。

インスリン療法中の1型糖尿病患者にエンパグリフロジンを上乗せした試験結果が発表 (10月4日)
インスリン療法で治療中の1型糖尿病患者を対象にエンパグリフロジンを追加したEASE-2およびEASE-3の試験結果が第54回欧州糖尿病学会の年次集会で発表された。

発表によると、EASE2試験はインスリン補助薬としてのエンパグリフロジン10㎎、25㎎の上乗せで、プラセボ群に対して52週後のHbA1cはそれぞれ-0.54%、-0.53%と有意に減少し、またEASE3試験においてはエンパグリフロジン2.5mg、10mg、25mgの上乗せで、26週後のHbA1cはそれぞれ-0.28%、-0.45%、-0.52%と有意に改善した事が報告された。

また副次的エンドポイントである体重の減少、血圧の低下、毎日のインスリン総量の減少効果も示された。安全性に関しては、2型糖尿病におけるエンパグリフロジンで報告された安全性プロファイルとほぼ一致していた事も確認されている。

※本邦における1型糖尿病患者に対するエンパグリフロジンの投与は適応外である。