第54回欧州糖尿病学会(EASD)の年次集会が10/1から10/5にドイツのベルリンにて開催されました。集会の中では糖尿病薬についての試験結果が複数発表されており、その一部についてもご紹介します。

STAT3阻害薬を用いて糖尿病モデルマウスの血糖値を改善することに成功 (10月9日)
順天堂大学は、STAT3シグナルを抑制することで新生β細胞数を増加させ、糖尿病モデルマウスの血糖値を改善することに成功した事を発表し、研究結果が英国科学雑誌「EbioMedicine」のオンライン版に2018年9月25日付で公開された。
本研究はSTAT3を標的とした新たなβ細胞作製法の開発につながる可能性があり、糖尿病再生医療への応用が期待される。

経口のGLP-1受容体作動薬と週1回皮下注射のGLP-1受容体作動薬を比較した臨床試験の結果が発表 (10月4日)
日本人の2型糖尿病患者を対象とした、経口のGLP-1受容体作動薬のセマグルチドと週1回皮下注射のデュラグルチドを比較した第3相試験の結果が、第54回欧州糖尿病学会の年次集会で発表された。デュラグルチド0.75㎎に対してセマグルチドは3mg、7mg、14mgで有効性と安全性を検証しており、有害事象の発現率は両群で同程度であった事が示され、有効性に関しては投与後52週間のHbA1cと体重の減少において、最高用量であるセマグルチド14㎎において有意に高い事が示された。

ライゾデグ配合注と、インスリングラルギンU100とインスリンアスパルトを併用したStep by Step試験の結果が発表 (10月3日)
ライゾデグ配合注の1日1回投与がインスリングラルギンU100の1日1回投与とインスリンアスパルトの1日1回投与を併用した場合と比較したStep by Step試験の結果が、第54回欧州糖尿病学会の年次集会で発表された。2型糖尿病患者を対象とした両薬剤の投与で、ライゾデグ配合注は26週後の時点で注射回数が50%減少し、1日に投与されるインスリンの総投与量が12%と有意に減少し、また夜間の低血糖リスクが有意に低下する事が示された。安全性に関しても、全ての重大な低血糖の発現率は有意に低いことが示された。ライゾデグ配合注はインスリンデグルデクとインスリンアスパルトを配合したペン型製剤である。

トレシーバとインスリングラルギンU100と比較した事後解析結果が発表 (10月3日)
1型および2型糖尿病患者の臨床診療に関する事後解析の結果から、トレシーバはインスリングラルギンU100と比較して、低血糖の発現リスクの上昇を伴うことなく、血糖コントロールが改善される可能性がある事が、第54回欧州糖尿病学会の年次集会で発表された。発表によると、トレシーバはインスリングラルギンと同程度の低血糖の発現率であり、HbA1cの平均値の低下は1型糖尿病患者で0.70%、2型糖尿病患者で0.96%であることが示された。

中外製薬とイーライリリーは非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬「OWL833」のライセンス契約を締結 (9月27日)
中外製薬とイーライリリーは、中外製薬が創薬した非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬であるOWL833に関するライセンス契約を締結したことを発表した。本契約によりイーライリリーはOWL833に関する全世界の開発権および販売権を取得している。