糖尿病による筋力や学力への影響や、ライフスタイルや季節によるHbA1cへの影響、日本人が特有にもっている糖尿病に関わる遺伝子領域といった、糖尿病領域において未解明だった分野での研究報告をご紹介しております。さらに学会より専門医間での紹介基準が公表されており、糖尿病領域に携わるにあたってチェックしておきたい情報を掲載しておりますので是非ご確認ください。

糖尿病による筋肉減少のメカニズムを解明 (2月21日)

神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授らの研究グループは、糖尿病で筋肉量が減少するメカニズムを世界で初めて明らかにし、研究成果が「JCI Insight」オンライン版に掲載された。

本研究では、血糖値の上昇が、WWP1とKLF15という2つのタンパクの働きを通じて、筋肉を減少させることが初めて明らかとなった。神戸大学は「これらのタンパクに作用する薬剤を開発できれば、筋肉減少に対する治療薬になることが期待されます。」と述べている。

JDDMのデータベースを用いた解析結果によるHbA1cの季節変動 (2月10日)

2型糖尿病患者が薬物管理下にあっても、HbA1cは季節変動するという研究結果が「Diabetes Care」オンライン版に公開された。

糖尿病データマネージメント研究会(JDDM)のデータベースを用いて解析され、全国の診療所から登録された約10万例のデータから、2型糖尿病患者4678例を抽出し、HbA1c7%未満の目標達成率について月ごとの解析を行った。その結果、HbA1cの目標達成率は夏が53.1%だったのに対し冬は48.9%と下がっていた。

1型糖尿病と子どもの学力との関係 (2月5日)

1型糖尿病の有無で読書と数学のテストの点数に差はみられないとする研究結果がJAMAに掲載された。 デンマークの公立小学校の生徒を対象とし、約63万人を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。1型糖尿病と確定診断された2,031人と診断されていない群の間で、読書と数学の合計点数の平均値に有意な差は認められなかった。

日本人集団の2型糖尿病に関わる新たな遺伝子領域 (2月5日)

20万人規模の日本人集団の遺伝情報を用いた大規模ゲノムワイド関連解析において、2型糖尿病の危険性を高める遺伝子領域を新たに28箇所同定した研究結果が「Nature Genetics」オンライン版に掲載された。

東京大学を始めとする研究グループによると、2 型糖尿病治療薬の標的分子であるGLP-1受容体のミスセンス変異が2型糖尿病の危険性と関わることを見出し、このミスセンス変異が薬剤投与後のインスリン分泌を増加させるため、薬の効き方を予測する指標に応用できる可能性があるとしている。

日本糖尿病学会と日本腎臓学会による専門医間の紹介基準 (1月31日)

日本糖尿病学会と日本腎臓学会は専門医間の紹介基準を作成し公表した。腎臓専門医から糖尿病専門医への紹介基準として、糖尿病治療の大幅な変更等が望まれる場合、および糖尿病専門医による糖尿病の継続管理が望ましいと考えられる場合の紹介基準が公表された。

一方、糖尿病専門医から腎臓専門医への紹介基準としては、主に腎臓専門医による腎疾患の鑑別、および主に腎臓専門医による継続管理を目的とした紹介基準が公表された。

夕食から2時間以内の就寝によるHbA1c値に対する影響 (1月21日)

中高年日本人において、夕食から2時間以内の就寝がHbA1c値に影響しないとする研究結果が「BMJ Nutrition, Prevention & Health」オンライン版に発表された。

健康診断データ(2012年、2013年、2014年)を用いて、糖尿病前症および糖尿病でなかった40~74歳の1573人におけるライフスタイルおよび測定データを収集し、質問票への回答より夕食から就寝までの時間を評価し、2014年までのHbA1c値の変化に対する影響を分析した。その結果、HbA1c値の変化に喫煙・アルコール摂取・BMI高値が影響した可能性が示されたが、夕食から2時間以内の就寝による影響は認められなかった。